2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

Soup(1)

「ほんとう」みたいなものが透けて見えるときがある。でもほとんどは知らない間に通り過ぎていくんだ。たとえば純粋で危なっかしくて、すぐに折れてしまいそうな七色に光り輝く鉱石。そういったものと健全に向き合うのはひどく難しい。だからだろうか、僕は…

それいぬ

機械の身体なら、よかった。心臓の音がうるさくて目を覚ますのは、私がうつ伏せにしか眠ることが出来ないから。肉々しい拍動に辟易しながら、両手を支えに、顔をシーツからそっと持ち上げる。急いで口をゆすいで気持ち悪さを洗い流して、身支度を整えて家を…

思い出せない

終電は人を動物の群に変えてしまう。僕はシートに座り、眠ったふりをしていた。しかし電車の揺れには敏感に反応した。許容量ぎりぎりのアルコールのせいだった。体の中に木製の樽がすっぽりとはまりこんでいて、沢山の種類のアルコールは皆一様にその場所に…

真夏日和

つらい。私の景色を返して。お母さんと私と妹で家にいたら知らない男の人が入ってきた。お母さんは立ち上がってその人に笑いかけた。その人は私の名前を呼んで、よくわからないことを言った。内容は忘れてしまった。でも、何にもわからなかったけどわかった…